青は透明

思考のたれ流し

映画「キッチン・ストーリー」(2003)、コーヒーは会話の立役者

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北欧を舞台にした、おじさん二人の心温まる友情を描いた映画です。

ほんとにおじさんしか出ません。

 

物語の経緯としては、ある家庭用品会社が新製品の開発にあたり「独身男性の台所における行動データ」を集めるため調査員を派遣します。

 

調査員のひとりニルソンは、ノルウェーの田舎に住む老人イザックの家に停留します。

調査の際のルールは1つ。

 

「調査対象と会話をしてはいけない」。

 

これ、端から見るとものすごーくヘンテコリンな風景です。

イザックが日常生活を行う傍ら、ニルソンはプールの監視員が座るような高い椅子を隅に置いて、そこからイザックを黙って注視している、という状況。

そもそもイザックはものすごくやりづらそうだし、ニルソンはニルソンで次第にアホらしくなってそうです。
このやり方だと観察者効果(※)がモロに出るのではないかと激しく思うも突っ込まない。
(※社会科学の分野において、被観察者が「観察されている」ことを認識することでその行動に影響を及ぼすこと)

 

事実、ニルソン以外にも調査員はいますが、我慢できずに調査対象と会話してしまったり、挙句の果てに一緒に酒盛りまでしてしまった調査員もいたようです。

 

ニルソンも、一杯のコーヒーをきっかけにしてイザックと会話してしまいます。

 

パーソナルスペースが確保できない空間の場合、コミュニケーションがないと恐らくストレスを助長させるんでしょうね。


同じ部屋にいるんだから喋っちゃった方が楽に決まってる。だからみんな交流持っちゃう。面白い。

 

このおじさんふたりの交流がとても心あたたまります。

 

他愛ない話をしながら煙草を吸って、コーヒーを飲んだり。

イザックの誕生日を大きなケーキとバーボンで祝ったり。
(ケーキにはしゃぐおじさん二人は凄く可愛い。)

なんでもない時間が流れている映画ですが、それがなんともいとおしく思える。

寒い冬だけどふたりのやりとりはほんわかあったかい。

陳腐な言い方だけど、友情に年齢は関係ないと思わせてくれる作品。

 


北欧の文化を生で見たことはないですし、映画や書籍の中にしかその生活様式を見つけることができませんが、

「お茶」は彼らにとって大事なコミュニケーションの要素であるように見えました。

気になったので調べてみた。

以下、Wikipedia先生より一部引用(https://en.wikipedia.org/wiki/Norwegian_cuisine#Beverages
日本語版はなかったので英語版から(ノルウェーの食文化-飲料:コーヒーについて)。


"Norway has a particularly strong affinity for coffee and is the second highest consumer of coffee in the world, with the average Norwegian drinking 142 liters, or 9.5 kg of coffee in 2011. Coffee plays a large role in Norwegian culture; it is common to invite people over for coffee and cakes and to enjoy cups of coffee with dessert after the main courses in get-togethers. The traditional way of serving coffee in Norway is plain black, usually in a mug, rather than a cup.

訳すとこんなかんじでしょうか。

"ノルウェーにおいてコーヒーは非常に生活に根付いており、2011年の調査では、一人あたり平均142リットルのコーヒーが飲まれ(豆の量でいえば9.5キロ)、その消費量は世界でも2番目に多い。家で客人を招く際にケーキと共に出されたり、会食のあとのデザートと共にサーブされたりするのはノルウェーの文化においては至極一般的で、大きな役割を果たしていると言える。ブラックで、かつカップではなくマグカップに注がれたものを出すのが伝統的なやり方である。"


映画の中でも頻繁にコーヒーを飲むシーンがありますが、誇張ではなさそうです。
文化として根付いているようですね。

 

日本でお茶を出す行為はどちらかといえば形式的で儀礼的な要素が強いですが、こちらはもっとカジュアルなもののように思えますね。


なんとなくバックグラウンドで説明が付くので、コーヒー片手に話をするのに違和感が無く、自然で、
かつコミュニケーションの描写に味わい深さを与える重要なアイテムとなっています。
観た後はコーヒーのみたくなる。


余談ですが、途中でニルソンがニシンの酢漬けやらチーズやらサラミを食べるシーンがあって、それがまあ美味しそう。
中でもヴルストを缶詰のまま食べてるのが一番食欲に訴えかけてきた。いい食事シーン。
そのほか、ちょっとした小物やラジオから流れるノスタルジックな音楽など、北欧らしさが各所にちりばめられいて監督のこだわりが感じられました。