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思考のたれ流し

【ネタバレあり】今更The Last of Usをプレイしたのでその良さを書きたい

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The Last of Us

 2013年に発売されたタイトルですが、ここ最近PS4でリマスター版をクリアしました。

言わずと知れた名作ですが、皆がこぞって言うだけはある素晴らしいストーリーが描かれています。以下、ネタバレ含むのでご注意を。

 

 

このゲームで好きなところは、圧倒的な「救いの無さ」。

序盤で最愛の娘サラを失うところから悲しみの連鎖が終盤まで続きます。

非常に暗いストーリーであり、途中で胸が苦しくなるようなシーンも多々あります。

プレイヤーである私たち自身は、主人公であるジョエルを主観にして物語を体験します。自分自身(=ジョエル)に救いを求めて旅をするわけですが、邂逅するのは救いではなく絶望ばかり。プレイしていてめちゃくちゃつらいです。

 

その救いの無い物語の中で、エリーという少女の存在はかなりジョエルにとって重要な存在になります。一度サラを失くしているジョエルからすれば、どこかサラの存在をエリーに投影することもあったかもしれません。ただし、その喪失はジョエルに大きなダメージを与えていることは明白です。ちょっとここで考えたいのが、「他人の存在が自分の存在意義になりうる」ということです。それを考えるにあたり、出てくるのがヘンリーとサムです。

彼らは道中で出会う兄弟であり、ジョエルたちと協力しながら旅をします。

実際に血の繋がった兄弟ですから、絆という意味ではこれ以上に大きなものはないでしょうし、実際にヘンリーは常にサムを気にかけていました。

しかし、サムが知らずのうちに感染してしまっておりエリーを襲い、ヘンリーはやむを得ず発砲してサムを殺します。自分の弟をその手で殺したわけです。そして、その直後サムは自害します。このシーンは、サムがヘンリーにとって自身の存在意義、あるいはその一部となっていたことが見て取れます。つまり、その存在意義を喪失したという事実、そして自責の念に堪えられずに死ぬことを選んでしまった。これは、他人の存在が自分の存在意義となっていたから起こったことのはずです。もしサムがヘンリーにとってどうでもいい存在ならそうはならなかったはず。当たり前ですよね。生きる目的が希薄な終末世界における身近な者の死は、容易に死を決断させるほど大きな出来事であるということ。それを改めて実感するシーンです。

 

ジョエルは、一度存在意義である娘を失っています。普通ならヘンリーのように自死を選んでも不思議ではないでしょう。その悲しみは想像を絶するほどだったでしょう。自殺も考えたかもしれません。ですが生きることを選びました。ジョエルは、サラという存在意義を失ったあと、「自分自身が生きること」のみを自分自身の存在意義としたのではないでしょうか。生きる目的は「生きること」。娘を失い、エリーと本当の意味で絆が生まれるまでのジョエルは、かなり冷たく、人に深入りすることを避けているようでした。比較的仲の良さそうに見えたテスとも、ビジネスパートナーの域を出なかったように思えます。ジョエルは、エリーに情が移ってしまうことで、エリーが自身の存在意義となり、そしてまたそれを喪失することを恐れていたのでしょう。ヘンリーとサムという兄弟の死は、その事実をジョエルの眼前に突き付けたのでしょう。この出来事は、エリーを弟であるトミーに預けることを決断させたはず。

 

しかし、エリーはそのような機微に敏感でした。上記の件について、ジャクソン群でジョエルと口論した際、「何を怖がってるの?」と鋭い指摘をします。失うことを恐れているジョエルにとって、言い返す術はなかったでしょう。エリーも素直な部類ではなく、口には出しませんが彼女なりにジョエルを大切に思っていました。そんなエリーが、「大切な人はみんな死んだか私を置いていった、あんた以外」というあまりにもストレートな言葉を発したことに、ジョエルは何を思ったのでしょうか。この後、結局エリーをトミーに預けることをやめ、2人で旅を続けることを決めるシーンは、これまで押し殺してきた「愛情」という自分自身の感情をジョエルがサラの死後はじめて受け入れるシーンでもあり、僕が好きなシーンのひとつです。とても人間臭くて、愛おしい場面だと思います。

 

ファイアフライの病院で、寄生菌を根絶するためのワクチンを作るための犠牲にされかけたエリーを救い出します。エリー自身、それにより自身が死ぬことは伝えられていなかったと思います。ただし、エンディングに入る直前、エリー自身がこの世においてあきらめに近い感情を抱いており、生に固執していないことが見て取れます。そんな都合を鑑みず、人類の救済という大義名分を切り捨ててまでエリーを救ったジョエルの行動は、自分勝手といえばそれまでかもしれません。人類の利益の総量を考えたときに、あまりにも大きな損失であり、罪であることは間違いありません。しかし、ジョエルの悲壮な境遇を知っている私たちに、それを悪だと断じることができるでしょうか。できないでしょう。私たちは人間であり、自分が「境界」の外側にいるときは、利益の総量が多いほうの選択をすることができますが、内側にいれば、途端に合理性のみを追求することが難しくなってしまう、という欠陥を抱えた存在です。もしあなたがジョエルの立場なら、どうしたでしょうか?同じようにエリーを救いますか?それとも、人類のための行いをしますか?

 

冒頭に述べたように、圧倒的に救いが無い世界です。その中で、ジョエルとエリーの二人の絆のみが輝いて見えます。2人がどのように旅をし、絆を深めあっていくのか。The Last of Usというゲームにおいて、唯一の心のよりどころと言えます。

 

【その他、好きなところなど】

・陰鬱なBGMも世界観にマッチしていていいですね。エンディングへの入り方は本当に鳥肌が立ちます。

・季節の移り変わりが示されるところ。特に、ヘンリーとサムが死んだあとに、FALL(秋)と出るところの喪失感はいかんともしがたい。FALLは英語で「落ちる」「落下」という意味もあり、ここではその意味では使われていないでしょうが、そこからの展開に何か不安なものを感じずにはいられません。またその直後、鬱々としたどんよりした天候で物語が再開するのも、嫌な感じです(いい意味です)。ジョエルが大怪我を負った後にWINTER(冬)になるのも、ものすごく孤独を感じさせる演出。季節がどことなく想起させる感情をうまく操っている感じがする。

・戦闘が楽しい。自分はゲーム下手なので初級でしたが、敵に見つからずに一人ずつ始末していくのは必殺仕事人になった気分。

・何気ないジョエルとエリーの会話が聞いていて面白い。特に好きな会話は、東コロラド大学で、エリーがジョエルに歌をせがむところ。

・エリーがどんどんタフになっていくところは本当に見ていてじーんとくる。ジョエルが負傷したときに、傷を負いながらも一人で敵を倒して切り抜ける所なんかは、子の成長を見守る親心に近いものがある。

・世界観が綺麗。文明はすでに崩壊し、自然が街を侵食しているので、ため息が出るくらい美しい。息苦しい建物の中から外に出れたときなんかは安心感とその綺麗さにほんとにはぁ~~~~っとなる。

 

色々書きましたが、語りつくせぬほど素晴らしい作品ですね、ほんと。

そのうち2もやると思います。もう少し安くなったら買って感想書こうかな。