青は透明

思考のたれ流し

映画「マネーボール」(2011)、勝利への飽くなき探求とその根底にある物の正体

 

movies.yahoo.co.jp

 

MLBを舞台とした、ノンフィクションストーリーです。

 

「弱小チームが努力の末に強豪を打ち破る」というプロットはありきたりなものですが、この映画は少し毛色が違います。

 

主人公は弱小で資金難にあえぐチーム、アスレチックスのGM(ゼネラルマネージャ)で、「いかに出費を抑えて、ヤンキースレッドソックスのような資金力のあるチームに勝つことができるか」に心血を注ぎます。

 

途中でビリー交えたマネージャ層が「どの選手を獲得するのがいいのか」ということを議論しているのですが、ここのコントラストが面白い。

 

老いた彼ら選手たちを評しては言います。

「足が速い」「スイングがいい」「癖がない」「よく打つ」

これらの意見には、何一つ具体性がありません。

 

ビリーが求めているのは「勝利」であり、その為には「得点」が必要になります。つまり「ヒットの数」「出塁率」「四球の数」のような、具体的な「数値」を以てして選手を客観的に評価することこそが、勝利への方程式だと説くわけです(これは「セイバーメトリクス」という、統計学的見地から観た評価らしいです)。そして、「客観的評価が高いが、見向きもされていない選手」を格安で獲得しはじめます。

 

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セイバーメトリクス指標

 

論理的に導き出された「数値」は具体性を持つものですが、「経験」によってチームを運営してきた人間にとってはひどく受け入れがたいものであり、多方向から批判を受けることになりますが、アスレチックスは着々と勝利を積み重ねて、大舞台へと立つことになります。

 

野球は人間がやるスポーツである以上、例外は常に存在しえますし、規則性を外れたデータが採取できることもあるでしょうが、それでも統計を取ることで、プレイの中に傾向を見つけることが出来る訳です。よくよく考えればそれ以外に信じるに値するものなどないように思えるのですが、一昔前までは経験だけに頼り切ったチーム運営が行われていたようです。そういう意味で、ビリーは誰よりも勝つことにこだわっていたはずです。勝つためには勝つための論理がいる。至極当たり前のようなことの気がするのに誰もやってこなかった。思考停止というやつですね。戒め。

 

 

ラストシーンがグッときますね。

 

彼も昔は野球少年だった。野球が好きだった。プロのスカウトを受けた。プロになった。挫折した。スカウトとして生きることを決めた。そして、勝つことだけにこだわるようになった。

 

いつの間にか勝つことが目的になっていた。あることをきっかけにして彼は思い出したことでしょう。「自分は、野球が好きなんだ」、と。

 

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面白い映画でした。自分は野球はそこそこ好きですが、こういう視点で野球を考えたことはなかったです。今後いろいろ裏を勘ぐっちゃうかもしれません。

 

野球が好きでない人も楽しめますし、野球好きの人ならもっと楽しめる映画ではないかと思います。

 

【どうでもいい話】

途中で試合開始前の国歌斉唱シーンが入るのですが・・・

 

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あなた様は・・・

ジョー・サトリアーニやないかい!