映画「セッション」
いわゆる「才能至上主義」が強く描かれているよう感じました。
この映画に努力がうんたらとか、一般的なサクセスストーリーにありがちなものは
ありません。いや、あるにはあります。主人公のニーマンは指から血が流れだしても
ドラムを叩き続けるほど努力していますが、そこにまるで終着点が見えず、
ある種の異常さしか浮かび上がってきません。
主人公のほかにドラマーが二人いるの
ですが、血を流しながらフレッチャー(教授)に言われるがままにドラムを叩き続ける
シーンでその二人はドン引きしています。
多分この時点で、立ってるステージが違う。
完全に「ジャズに取り憑かれている」と言ってよく、チャーリー・パーカーになれる人間はそうはいない、ということがわかります。
だから普遍的な人(自分も含めて)がこの映画を見ても、何らかのモチベーションを
向上させてくれることはないし、「これで終わり?」と思うでしょうね。
むしろその自分が知ってる日常との微妙な乖離感を楽しむことのできる映画、という感じでしょうか。この映画を見てニーマンやフレッチャーに共感できた人はたぶんチャーリー・パーカーにも、シェリー・マンにも、はたまたジョン・コルトレーンにだってなれる素質がある人間ではないかと思います。
ラストの演奏シーンでも、ニーマンは自分の演奏でフレッチャーをねじ伏せます。
実力の世界ですから。この映画はそこが強く出ていて、ニーマンもフレッチャーも正直言ってまともな人間ではないです。だが、ジャズができればいい。そういう音楽の世界がストレートに描かれている。
最後の「キャラバン」からエンドロールまでの流れが最高。ここを見るためだけにでも観る価値あります。ジャズ好きならより一層楽しめる。せっかくなら低音効かせて観ましょう。ウッドベースとバスドラの音が気持ちよくて、ほんとにスタジオにいるみたいですよ。
それにしても、フレッチャー役のJ・K・シモンズの演技がすごかった。鬼気迫るという感じでめっちゃ怖い。いかつい顔のハゲが怒鳴り散らしたら怖いに決まってんだろハゲ。名演技だ。